今が旬!東急電鉄9000系撮影ガイド

東急9000系の概要

東京急行電鉄(以下、東急と略)9000系は今を遡ること26年前の1986年3月にトップナンバー9001Fが登場した。東急初のVVVFインバータ量産車であり、車端部に設けられたボックスシート、LED車内案内表示器、正面貫通扉を車掌台側に寄せて運転台のスペース確保や視野の拡大などに表れるように、それまでの東急の車両とは一味も二味も違うこの車両の登場は21世紀に向けた東急の意欲作であった。
東急では9000系を東横線の顔として8両×14本を6年間で投入した(これとは別に当初から大井町線用として9007Fを投入)。当時の東急東横線は急行運用と各停運用が独立しており、東横線のフラッグシップ的存在である9000系は急行運用に優先して使用されてきた。また、14編成とまとまった数が投入されたので、東横線に在籍していた8500系を増発需要のあった新玉川・田園都市線に転籍させたり、一部の8000系を大井町線に転籍させてグリーン色の旧型車を淘汰するなど、転配は大規模に及んだ。その後運用面では2001年の特急運転開始、そして2003年の横浜高速鉄道みなとみらい線直通運転開始など、いくつかの大きなダイヤ改正における運用変更で急行運用・各停運用の区別が無くなり、9000系も各駅停車から特急まで全ての種別を担当するようになった。

過渡期に入った9000系

登場以来、東急東横線の顔として君臨し続けてきた9000系であるが、その体制に大きな変化が始まったのは3年前の2009年からである。2012年度完成を目標に進められている代官山~渋谷間の地下化によって東京メトロ副都心線との直通運転が決定され、9000系は直通運転の仕様に対応しないことから順次5両に短編成化の上、大井町線へ転籍することになったのである。
転籍は2009年度に2本、2010年度に4本、2011年度は2012年1月末までに1本実施されている。また、この記事を執筆している段階で9013Fが長津田車両工場に入場し、大井町線向けの短編成化改造を受けている。これにより、東横線に残る9000系は6本と登場時の半数を切った。2012年度も短編成化による大井町線への転籍という流れは一層進むと思われる。本稿では、まさに過渡期とも言うべき東急9000系について、運用・撮影地・車両形態にスポットを当てて伝えたいと思う。

9000系の運用

東横線は元住吉検車区に全ての車両が所属している。東京メトロ日比谷線直通の運用を除いた、渋谷~元町・中華街の運用に入る車両は朝ラッシュ時が最大36本、日中はこのうち10本が入庫するので26本が運用に就いていることになる。夕ラッシュ時には入庫していた車両のうち2本が再出庫するが、同じ運行番号でも朝ラッシュ時と夕ラッシュ時で車両が異なる場合がある。
車種別では2012年2月末の時点で5000(5050、4000を含む)系が34本、Y-500系が6本、9000系が6本の合計46本となっている。このうち4000番台は10両編成のまま運用に就いていないものが3本、5000系やY-500系の定期検査・副都心線対応化改造で常時4本程度が運用離脱しているので実稼動可能な編成は39本程度と推測される。
したがって9000系の遭遇機会はおよそ6分の1となるのだが、本線上で走行する36運行の全てはどの車種でも充当できるものであり、日中入庫の27運行~36運行に9000系が多く充当されると、昼間には本線上に2本程度しか走行していない日もあるので注意が必要だ。

大井町線は長津田検車区に全ての車両が所属している。急行運用は6000系が専属となっている他は、全ての車種が共通で運用されている。最も多い朝ラッシュ時で17本、日中はこのうち8本が入庫して9本が運用に就く。夕ラッシュ時には再び4本が再出庫して13本体制となる。同じ運行番号でも朝ラッシュ時と夕ラッシュ時で車両が異なる場合があるのは東横線と同様だ。
車種別では8090(8590を含む)系が7本、8500系が4本、9000系が8本の合計19本となっている。およそ3本に1本の割合で9000系に遭遇するので、東横線よりは見つけやすいだろう。

なお、実際の車両運用と列車番号との関連性についてはRail Magazine331号(2011年4月号)において、柴田東吾さんによる「東京急行電鉄2010年車輌のうごき」の記事内に詳細が例示されているので、ここでは割愛させて頂く。

ファン視点で気づいた9000系の形態

9000系は約6年間に渡って製造されたので、製造時期によって形態に若干のバリエーションが存在する。また、客室内更新改造によって更に形態の違いが発生してきた。ここでは一ファンである私の視点で気が付いた部分について、形態の違いをまとめてみた。
製造年次については以下の通りである。
1次車・・・9001F(1985年度製)
2次車・・・9002F~9007F(1987年度製)
3次車・・・9008F~9013F(1988年度製)
4次車・・・9014F(1989年度製)
5次車・・・9015F(1990年度製)

1.製造年次による違い
1-1.側面のビード本数
1~2次車は側面窓下のビード本数が3本であるのに対して、3次車以降は側面の赤帯部分にもビードが入っており、合計4本となっている。幕板と腰板の接合方法の違いと推測される。

1-2.送風装置の違い
1次車は送風装置が東芝製スイープファンだったが、2次車以降は全て三菱電機製ラインデリアに統一されている。開口部の大きさが異なるので判別しやすい。

1-3.車側灯・側面方向幕まわりの違い
1次車の車側灯はフレームがあるタイプだったが、2次車以降はフレームレスとなり、見た目がスッキリしている。また、1~2次車までは幕板上部のビードが車側灯および側面方向幕に接しているが、3次車以降はビードの切れ目が離れている。

1-4.吊革パイプ接合方法の違い
ドア周辺には枕木方向にも吊革が設置されているが、この枕木方向の吊革を保持するパイプとレール方向の吊革を保持するパイプとの接合方法が1次車が金具を使用しているのに対して、2次車以降は両者を直接溶接して金具を省略している。

1-5.ヒーター保護板の違い
1~2次車のヒータ保護板(蹴込み)は大きな穴であるが、3次車以降は穴が小さいタイプのものになっている。

1-6.天井化粧板の違い
1~3次車の天井化粧板は側面と同じく柄の付いた化粧板であるが、4~5次車は蛍光灯の間が無地の化粧板になっている。

2.製造後更新改造等による違い
2-1.化粧板・銘板の違い
新製後20年を経過した9000系は順次、内装の更新工事を行っているが、座席袖仕切や妻面の化粧板を木目調のものに交換した編成が存在する。化粧板交換の際、妻面の銘板がプレートからシールに変更された。該当車は9003F、9005F~9007F、9011F~9013Fの7編成。

2-2.シートモケットの交換と仕切板の撤去
登場時の9000系は7人掛けシートの間に仕切板を入れて3+4の着席定員を促すものであったが、更新時のシート交換で仕切板を撤去している。また、仕切板の代替として手すりパイプを設置した。シートモケットの色は更新前がブラウンとオレンジ、優先席がブルーの3色であったが、交換後は全てワインレッドに統一されている。該当車は9001F~9003F、9005F~9015Fの14編成。

2-3.吊革の更新
9000系の登場時は丸型の吊革であったが、内装更新時に三角型の吊革に更新した編成がある。該当車は9003F、9005F~9007F、9011F~9013Fの7編成。

 

2-4.方向幕のLED化
登場当初は全編成が幕式であったが、大井町線転籍時にフルカラーLEDに交換された編成がある。該当車は9003F・9004F、9006F・9008F・9009F・9011Fの6編成。

2-5.スカートの取付
踏切事故等の障害時に床下機器類を保護するために東横線に在籍していた14編成にスカート(補助排障器)を取り付けた。しかし当初から大井町線に所属していた9007Fはスカートが取り付けられていない。

2-6.クーラーの交換
冷房能力のアップを目的に従来のRPU-2214型クーラーから新型のRPU-4018型に交換されている。交換は1両あたり4台あるクーラーのうち、両端のクーラーのみ交換が基本であるが、これは補助電源(SIV)の給電能力の関係である。一部の編成で交換状況に差異があるので、詳細は編成表を参照願いたい。外観は従来型がグレーに塗装された丸みのあるカバーに対して、新型はステンレス無塗装で角張っている。 →東急9000系編成表

2-7.パンタグラフの交換
大井町線に転籍した車両は所属の長津田検車区から離れており、降雪時の対応が困難となることから雪の重みで離線しにくいシングルアーム型のパンタグラフ(PT-7108B)へと交換された編成がある。該当車は9002F~9004F、9006F~9009Fの7編成。東横線在籍の7編成と9011Fは登場時より使用している菱形パンタグラフ(PT-44S-D-M)のままである。

9000系の撮影地

ここからは9000系が撮影できる場所を紹介していくこととする。特に高架線や地下区間の多い東横線はどうしても駅撮りが中心になりがちなので、バリエーションの一つとして参考にしてもらいたい。

A地点 東横線・都立大学~自由が丘
都立大学を過ぎると高架線から下ってきて数ヶ所の踏切がある。撮影地はそのうちの都立大学3号踏切で、上り下り電車共に撮影ができる。下り電車はストレート構図で順光は14時以降。上り電車はアウトカーブを正面で撮影する構図となり、順光は夏至前後の早朝のみである。影の出にくい、薄曇の日に撮影するのが良いだろう。
作例の焦点距離(35mm版換算)
下り電車:210mm、上り電車:320mm
アクセス:都立大学駅より徒歩12分。線路沿いに道路が延びているので、自由が丘方面に真っ直ぐ歩くと撮影地に辿り着く。車利用の場合は都立大学駅周辺のコインパーキングを利用。 →撮影地周辺地図

B地点 東横線・自由が丘~田園調布
自由が丘から田園調布にかけて東横線は切り通しの区間を走るが、その中間付近に歩道橋があり、この入口から下り電車を撮影する。順光は13時以降。上り電車も線路を挟んだ反対側から撮影できるが、線路がほぼ南北方向に走るため順光にはならず、薄曇の日に撮影することになる。
作例の焦点距離(35mm版換算):155mm
アクセス:田園調布駅から徒歩10分。線路沿いの側道を自由が丘方面に真っ直ぐ進むと世田谷区立八幡小学校が見えてくるのが目印。車利用の場合は環八通り沿いにコインパーキングが複数あるので、そこを利用する。 →撮影地周辺地図

C地点 東横線・多摩川~新丸子
両駅間の中間地点に多摩川を渡る橋梁があり、この橋梁を渡る様子を撮影する。鉄橋の手すりがやや煩く感じるが、広々とした青空や川の流れを一緒に写し込むなど、沿線の殆どが住宅街の東横線の中で一味違った写真にすることができるだろう。
撮影は下り電車のみとなり、順光は11時ごろ~14時ごろとなる。
作例の焦点距離(35mm版換算):136mm
アクセス:新丸子駅より徒歩12分。駅のそばを通る綱島街道を多摩川方面に進み、丸子橋の手前から多摩川の堤防を進む。車利用の場合は、新丸子駅の北側にコインパーキングが複数ある。 →撮影地周辺地図

D地点 綱島~大倉山
綱島駅からほど近い鶴見川橋梁を渡る電車を撮影する。背後の綱島駅周辺の建物が密集する様子と鶴見川周辺の開放的な様子のアンバランスがポイント。順光は9時ごろ~12時ごろ。
作例の焦点距離(35mm版換算):55mm
アクセス:綱島駅から徒歩7分。綱島街道で大綱橋を渡ってから鶴見川の土手を歩けば撮影地に辿り着く。車利用の場合は、綱島駅周辺に多数のコインパーキングがある。 →撮影地周辺地図

E地点 菊名~妙蓮寺
菊名駅を発車した下り電車が急カーブを過ぎて加速するところをアウトカーブ正面で写し止める、東横線の有名撮影地である。順光は11時ごろ~14時ごろ。
作例の焦点距離(35mm版換算):210mm
アクセス:菊名駅より徒歩10分、駅前の一方通路を妙蓮寺方向に道なりに進んで、菊名1号踏切の手前から線路沿いに歩く。車の場合は綱島街道沿いか菊名駅前の一方通路沿いにあるコインパーキングを利用。 →撮影地周辺地図

F地点 東横線・白楽~東白楽
起伏の激しい横浜市内では、鉄道と立体交差する箇所が多く、ストレート構図で撮影できる場所が意外と少ない。作例地点は白楽~東白楽の中間地点にあたる白楽2号踏切で、バックに住宅地が立体的に見える横浜らしい風景となる。順光は11時ごろ~14時ごろ。
作例の焦点距離(35mm換算):210mm
アクセス:東白楽駅より徒歩5分。改札口を出て線路沿いに歩行者用道路が延びているため分かりやすく辿り着くことができる。車利用の場合は白楽1号踏切から2号踏切の周辺にコインパーキングが多数ある。 →撮影地周辺地図

G地点 大井町線・戸越公園~下神明
大井町行きの電車が戸越公園を発車すると、下神明に向けて上り勾配に差し掛かる様子を撮影できる。ストレート構図だが、線路面がアイレベルというローアングルは力強さを表現するのに適しているだろう。順光は9時ごろ~11時ごろ。
作例の焦点距離(35mm版換算):155mm
アクセス:戸越公園駅より下神明方向へ徒歩5分、線路に沿った側道で豊葉の杜中学校の前が目印。車利用の場合は第二京浜(国道1号)から戸越6丁目交差点で戸越公園駅に出られる。駅周辺のコインパーキングを利用。 →撮影地周辺地図

H地点 大井町線・中延~荏原町
高架の中延駅から下り勾配とカーブで荏原町駅に差し掛かる様子を撮影する。昼間のパターンダイヤでは荏原町駅で上下列車がすれ違うことが多いので注意。順光は15時以降。
作例の焦点距離(35mm版換算):256mm
アクセス:荏原町駅から徒歩1分。駅ホームに隣接する中延2号踏切が目印。車利用の場合は第二京浜(国道1号)で東急バス荏原営業所の前から一方通行路を進むと荏原町駅周辺に出られるので、周辺のコインパーキングを利用。 →撮影地周辺地図

I地点 大井町線・旗の台~荏原町
旗の台駅から下り勾配を進む大井町行きの電車をストレート構図で撮影。ここもH地点同様に対向電車に被られることが多いので注意。順光は10時ごろ~正午ごろ。
作例の焦点距離(35mm版換算):155mm
アクセス:荏原町駅から徒歩2分。駅ホームに隣接する荏原町1号踏切が目印。車利用の場合は第二京浜(国道1号)で東急バス荏原営業所の前から一方通行路を進むと荏原町駅周辺に出られるので、周辺のコインパーキングを利用。 →撮影地周辺地図

J地点 大井町線・自由が丘~緑が丘
込み入った住宅街の中を走るイメージの大井町線であるが、この付近は少し開けた感じで撮影することができる。構図をうまく調整すれば背後の住宅が殆ど隠れてスッキリするので、大井町線の中でも一番お勧めできる撮影地である。順光は10時ごろ~13時ごろ。
作例の焦点距離(35mm換算):136mm
アクセス:緑が丘駅より徒歩7分。緑が丘1号踏切が目印。車利用の場合は環八通りから自由通りを駒沢方面に進み、奥沢駅そばの奥沢神社を右折すると緑が丘駅に辿り着くので、駅周辺のコインパーキングを利用する。 →撮影地周辺地図

K地点 大井町線・尾山台~九品仏
L地点 大井町線・等々力~尾山台
両地点とも住宅街の中のストレート構図という点で平凡な場所だが、昼間のパターンダイヤでは対向電車に被られる確率が非常に低いので、候補地の一つとしていかがだろうか。順光は両地点共通で10時ごろ~正午ごろ。
作例の焦点距離(35mm版換算):(K地点)160mm、(L地点)155mm
アクセス:(K地点)尾山台駅から線路沿いの側道を九品仏方向へ徒歩7分、九品仏3号踏切の手前。(L地点)尾山台駅から線路沿いの側道を等々力方向へ徒歩3分。自転車駐輪場の終端付近が目印。
車利用の場合はK地点、L地点共に環八通りの尾山台交差点から北上すると尾山台駅前に辿り着く。駅周辺にコインパーキングが複数ある。 →K地点地図  →L地点地図

おわりに

以上、東急9000系について簡単ではあるが現状をまとめてみた。最近では廃車やイベント時に駅のホームで撮影しようとするレイル・ファンが集結したり、線路内に侵入して検挙された事件が報道されることも多く、読者諸兄も心を痛めていることと思う。今回取り上げた撮影地の多くがそういった危険行為をしなくても安全に撮影できる場所であり、これから撮影されるレイル・ファンの皆さんにとって参考になれば幸いである。

(この記事は2012年3月1日現在の情報・データにより作成されました)

  1. :mrgreen: 東急のような、ほんとうにひどい通勤時の混雑列車は、千代田線開通前の小田急みたいなものです。
    小体躯の私などは、息もできない超満員です。

    そんな東急でも、いろいろと思案の末、車両計画をやっているものなのですね。このレポートでなるほど、と思います。
    東急の開通で小田急がぐーんと空いたので、助かりました。
    若き日のありがたい思い出に合点がいきました。

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